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サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム

サーキュラーエコノミー先進国であるオランダは、2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現することを目指しています。同国は、現在のシステムを転換するためのアイディアを実験する場所や機会の提供、スタートアップのサポート体制、情報を共有するシステムを構築しています。その一つが、サーキュラーエコノミーの実験地区となっているDe Ceuvelです。

こちらの動画も是非一緒にご覧ください!

De Ceuvelについて

De Ceuvel(デ・クーベル)は、アムステルダムの北部のアムステルダムノールドにあるサーキュラーエコノミーの実験地区です。この場所は、かつては造船所や工業施設があった場所のため、船や工場から流れ出た油などで土壌が汚染されていました。

アムステルダム市が、この土地の活用方法を公募し、選ばれたプロジェクトがDe Ceuvelのプロジェクトでした。同プロジェクトは、「クリーンテック・プレイグランド(クリーンテックの遊び場)」をコンセプトに、現在では多くの人々が集まる場所へと転換させることに成功しています。

De Ceuvelは、アップサイクルされたハウスボートが中心となって構成されています。ハウスボートは合計14隻あり、オフィス&コワーキングスペース、研究ラボ、イベントスペース、ホテル、カフェとして活用されています。また、ハウスボートを活用している企業は、建築事務所やフードテックのスタートアップ、デザイナー、ライター、フリーランスなど、さまざまです。

De Ceuvel 入居企業の紹介▼

De Ceuvelのサステナビリティ

De Ceuvelで行われているサステナブルな取り組み事例を紹介します。

アクアポニックスシステム

De Ceuvelでは、アクアポニックスを設置しています。アクアポニックスとは、水産養殖の「Aquaculture」と、水耕栽培の「Hydroponics」からなる造語です。アクアポニックスは、魚と植物を同じシステムで育てる新しい農業で、植物の水耕栽培装置と魚の飼育装置の2つに分かれます。バクテリアが養殖している魚の排泄物を植物の栄養素に分解し、植物はそれを養分として吸収し成長します。その際、植物は天然の浄化装置として水を浄化し、その水が再び魚の水槽へと戻るという循環型の農法です。

アクアポニックスは、水を捨てず、また農薬や化学肥料も必要としないため、サステナブルで地球に優しい農業とも言われています。De Ceuvelのアクアポニックスでは、カフェで使用する野菜やハーブを生産しています。

土壌汚染の回復

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム

多くの場合、汚染された土壌は、汚染された部分を取り除くことで綺麗な土壌として活用します。しかし、それは汚染された土壌が別の場所に移っただけで、本質的には何も解決していません。

De Ceuvelでは、Phytoremediation(植物による環土壌浄化)を行っており、地中の汚染物質を吸収し、土壌の回復につながる植物を植えています。当初は、柳とポプラといった数少ない植物が生えているだけでした。管理を行っているDELVA Landscape Architects社とベルギーのゲント大学は、そこから自然に生えてくる植物を詳しく観察し、経過をモニタリングした結果、現在はさまざまな植物が生い茂り、小さな林のようになっています。さらに、Phytoremediationに関する技術の向上や理解を深め、多くの人に伝えることも目指しています。

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム

De Ceuvelでは、人々が汚染物質に触れないよう、また植物の健康を守るために、14隻のハウスボートを繋ぐように桟橋が掛けられています。桟橋は、遊歩道としての役割を果たすだけでなく、De Ceuvelを訪れた人が楽しめるよう曲がりくねり、夕陽が見える場所は広く設計するなど工夫されています。

コンポストトイレ

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム
コンポストトイレ

プロジェクトの開始当初、De Ceuvelの土地は汚染されているため、下水道を整備することができませんでした。そのため、現在でもコンポストトイレが設置されています。トイレには、バイオフィルターが付いており、排泄物をコンポストすることができます。コンポストトイレは、従来の水洗トイレと比べて水の使用量を約600万リットル削減できます。De Ceuvelでは、排泄物の再利用にあたって病原体や残留薬などのリスクを考慮しつつ、排泄物から栄養素を回収する方法を研究しています。その栄養素は、施設に設置されているアクアポニックスの肥料として活用されています。

太陽光発電

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム

De Ceuvelでは、150枚以上の太陽光パネルが設置されており、年間で約36,000kWhの電気を発電しています。発電された電気は、De Ceuvelで使用する暖房システムの電力需要を賄っています。また、ブロックチェーンの技術を活用し、エネルギーのシェア・交換を行うことも可能です。

アップサイクル

サーキュラーエコノミーの実験地区「DE CEUVEL」|アムステルダム
アップサイクルされたハウスボート

De Ceuvelにある建物の大部分は、リサイクルやアップサイクルされた素材から作られています。敷地内のオフィスやホテルは、取り壊すはずだったハウスボートをそのままオフィスやホテル、カフェとして活用しています。また、オフィスやカフェで使用されている家具は、オランダ各地から集めた中古やリサイクル素材を使用しています。

最後に

イベントやワークショップを通じて、De Ceuvelには多くの人々が集まります。サステナビリティやサーキュラーエコノミーについて知らない人も、建物や食事を通じてサステナブルな取り組みに触れることができます。例えば、カフェで提供される食事は、動物性の食材を使用しないヴィーガン料理が提供されます。また、建物や内装で使用されている家具類も全てがリサイクル・アップサイクルされたものです。De Ceuvelは、訪問者に楽しんでもらうコンテンツを提供しつつ、サーキュエコノミーやサステナビリティについて考えるきっかけを与えています。日本でもこのような場所が増えることを期待します。

Cafe De Ceuvelについて詳しく紹介しています!▼

Picture of 丸末彩加

丸末彩加

丸末 彩加(まるすえ あやか)。幼少期をアメリカで過ごし、日本と海外どちらの視点も入れながら、楽しく社会問題を解決したいと思っています。趣味は旅行と音楽と食べることです。linkedinでも情報発信しています!

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