今できることを、考える。

新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都では3月28日-29日の週末に外出自粛要請が出されました。東京都や首都近隣の都道府県は、不要不急の外出を控える様に強く求めています。新型コロナウイルスの感染が、私たちの行動を制限し、生活に長期的に影響を与える見方が強くなっており、日本政府は4月に緊急経済対策を検討との報道もあります。

日本の観光産業では、京都、大阪、沖縄、長野などのホテル、旅館のキャンセルが相次いでいます。また、日本全国でバスが約1万2千台余っているとの報道もあり、バス事業者にとっても厳しい経営状況が続いています。事業者だけではなく、イベント自粛によって、収入が途絶え、困窮するフリーランスも多いです。これを機に、日本政府は生活保障として、ベーシックインカムの導入が行われるかもしれません。

観光インバウンドについて、状況を一言で説明すると、「ヤバイ状況」です。

航空業界は、各国の入国規制もあり、需要が激減。減便をせざる負えない状況です。航空会社は、一度減便すると、状態を復帰させるまでに、機材準備、従業員の職場復帰、各国の運輸・出入国管理局との調整など、時間がかかります。需要が回復しそうだということで、すぐに飛行機を飛ばすことは難しいです。足元の減便の決定が、夏・秋ダイヤまでに影響を与えます。この空のインフラの大打撃を考えると、日本だけではなく、世界の観光産業は今年の夏や秋までに、需要が回復するとは考えにくい状況です。需要の回復プロセスはゆっくりであると考える事が妥当ではないでしょうか。

■世界の観光産業が復活した時のイメージをする。

今の観光産業を取り巻く環境は確かにネガティブだと思います。バケーションを楽しむ観光だけではなく、ビジネス目的のツーリズムであるMICE企業の会議、奨励・研修旅行、国際会議や展示会)も大きな打撃を受けています。世界のMICEの8割が開催されている欧米では、新型コロナウィルス拡大の営業により相次ぎMICEイベントが中止となっております。予定されていた参加者規模数は、100万人を超え、国連連合貿易開発会議(UNCTAD)によると、MICEイベントの中止により、約103兆円の経済損失が起きているそうです。

経済的インパクトも大きく、新型コロナウィルスの拡大がいつ収束するのか、ワクチンはいつできるのか、見通しが難しいため、ネガティブなイメージが先行します。しかし、6ヶ月後はどうなっているでしょうか? 1年後はどうなっているでしょうか? 2年後は?

2年後も世界中で自粛規制が敷かれている可能性はゼロではありません。しかし、世界経済の状況は、回復傾向になるとイメージする方が多いのではないでしょうか?

では、観光産業のことを考えてみましょう。今回の新型コロナウィルスの影響により、人々の行動が変わる可能性がありますが、世界の人々は自らの好奇心、探究心を満たす為、若しくは、安らぎを求める為に、旅をするのではないでしょうか。それは、日常生活圏を一時離れて、外の世界へ出かけた時に感じる「解放感」と「緊張感」を人は求めているのだと思います。日常を離れ、よく知らない土地に行く為、不安によって、「緊張感」は高まります。しかし、感受性の高まりも感じ、それが「解放感」へとつながり、我々は心理的にも肉体的 にも精神をくつろがせてくれるのではないでしょうか。

我々が、この心理的欲求を失わない限り、観光産業は無くなりません。それどころか、世界的な人口増加とボーダーレス化によって、継続した成長が見込める産業が観光なのです。

■日本の観光インバウンドの課題は何かを改めて認識する。そこにチャンスがある。

世界の人々は、非日常を求めて、日本にもやってきます。日本は、美しい自然、美味しい食べ物、伝統文化からポップカルチャーに至るまで、他の国にはない、モノやコトが多く存在します。また、外国人から見たちょっと変わった日本という視点では、お菓子、おもちゃやお汁粉などが売られている自動販売機、たくさん機能のついたトイレ、カプセルホテルなどが良く紹介されています。日本って、なんか面白そうと思えるコンテンツはいろいろあります。

では、今後日本の観光インバウンドの成長を妨げる可能性がある課題はなんでしょうか?

課題①) 泊まる場所

日本には、2,000万人分の止まる場所しかありません。一時期、民泊がかなりの勢いで伸びましたが、規制により、Airbnbの利用者も60万人から600万人に減少しました。国として訪日外国人客数を年間 4,000万人を目指すなら、外国人観光客が心地よく、安心して滞在できる宿泊施設を、まずは4,000万人分作らないといけません。観光立国であるスペインやフランスは、宿泊インフラがしっかり整えられているからこそ、多くの観光客数を呼び、受け入れる事ができています。日本は民泊の規制緩和含めて、戦略を再考する必要があります。

課題②) 言葉の壁

日本で言葉が通じるかどうか不安。世界で個人旅行(FIT)が増える一方、海外観光客自らが公共交通機関を使い、レストランに行き、お土産屋で買い物を楽しみます。コミュニケーションが上手く取れないのではという不安は、海外観光客の消費意欲を削ぎます。正しい情報が伝わらないと、商品やサービスの価値がわからず、財布からお金を出しにくい状況が生まれます。この点、テクノロジーによって、言葉の壁を解決するソリューションが、多くなっていますが、Google翻訳やポケトークを使って、高価な商品やサービスがいくつも売れるでしょうか? テクノロジーをうまく活用しながら、人だから生み出せる価値を見直す必要があります。

課題③) 観光地の一極集中化 (オーバーツーリズム)

京都や鎌倉といった日本の代表的な観光地ではすでにオーバーツーリズム問題が起こっています。オーバーツーリズムによる主な問題点としては、環境汚染、治安悪化や交通渋滞の深刻化などが挙げられます。また、観光客の不品行により住民感情が悪化し、地域の伝統や風習が失われてしまう可能性もあります。そして、日本の場合には、需要が一点に集中することにより、その場所で深刻な人手不足が発生し、単純に接客が追いつかないことで、ホスピタリティが低下することも考えられます。

様々なオーバーツーリズム対策がありますが、中長期視点で我々が取り組むべきことは、観光客を散らばせるということです。つまり、人気観光地近くの観光コンテンツを開発し、多くの観光客に地方の観光地に積極的に足を運んでもらう仕組みが必要です。

課題④) コンテンツの多様性

様々なテイストを持つ観光客が日本に興味を持ち、訪れたいと思います。日本は、見るツーリズムが中心です。訪日初の観光客は、見るツーリズムをまずは楽しみます。その典型例は、ゴールデンルートです。まず日本のハイライトを見て楽しむ。そして、日本を知り、感じる。しかし、見るツーリズムだけでは、日本を再び訪れたいという動機づけは弱いです。先日、年に日本を4〜5回訪問するという、香港出身の富裕層の方とお会いしました。とにかく日本が好きとの事。日本は特に食が美味しい。47都道府県全て訪れたと言っていました。では、リピートしたい場所はどこかと質問すると、答えに悩み始めました。北海道の寿司屋は最高美味しかったし、熊本の温泉も極上の体験であったが、自分の探究心をさらに満たしてくれる場所があるのか…わからないとの事でした。

見るツーリズムのコンテンツを、これから2〜3段階掘り下げていく必要があります。コンテンツをただ単に体験型にするだけでは、競合と同じで、海外旅行客にとっては区別がつきにくいコンテンツとなってしまいます。

どうしたらリピーターが来てくれるのか? リピーター2回目、3回目のシナリオを予めちゃんと書く必要があります。

■今、できることは何かを考える。

ポストコロナで観光インバウンド事業に力を入れたいと考えられている事業者にとって、やるべきことは2つです。それは、「ウェブ」と「人材」育成です。「ウェブ」は主に、多くの人たちに自分の商品やサービスを認知して、行動して貰うためのもの。そして、「人材」は、顧客満足を満たす為に必要です。成熟社会の中でモノは溢れ、物理的な満足ではなく精神的な満足の時代へ移り変わっています。顧客はモノを購入するという観点よりも、そのモノを提供される過程のサービスに付加価値を感じ、購入するケースが増えています。

サービスには3つの特徴があります。

同時性 – サービスが生産されたと同時に消費している、サービスの需要と供給が同時に行われている。

変動性 – 全ての顧客に同じサービスを提供することは困難。顧客によって、スタッフの対応などの条件が変動する。

無形性 – サービスにはカタチも在庫もない。

サービス業である観光産業は、顧客とのやり取りの中で品質や評価が決まる傾向にあります。テクノロジーを使いながらも「人材」を育成し、顧客満足を生み出せる環境を作らなければなりません。

■まとめ

「ウェブ」と「人材」は短期では育ちません。延期が決定された2021年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、時間に余裕が生まれている今、取り組みを始めるのはどうでしょか?

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